E.N.R. クリプトモネダス

"Everybody Needs A Retreat." - 雑記帳

悪魔はペルシャ人の創作?一神教は非農耕民アーリア人とセム人の合作

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きれい、きたない。いい、悪い。好き、嫌い。

...人間は二元論が好きというか、クセです。宗教も同じです。

悪魔は神さまの敵として「発明」されました。いちばん最初に発明したのは誰かわかりませんが、西洋に(したがって世界に)多大な影響を与えたという意味では、ペルシャの宗教家ザラスシュトラ(BC1400-1200年の人)が最有力候補です。

彼の始めたゾロアスター教ユダヤ人には激甚なカルチャーショックでした。そのショックがユダヤ教、ひいてはキリスト教に引き継がれ、人類を進歩へ進歩へと駆り立てる道を用意しました。

 

終末論と神の審判

では、その根幹部分とはどこでしょうか?

ズバリ、終末論、それも神の審判で死後生が決まるという世界観でしょう。ユダヤ人はどこでこれを知ったのか?

バビロンの捕囚からユダヤ人を解放してくれたのはペルシャのキュロス王なので、おそらく接触の時期はその前、バビロン捕囚時代が濃厚です。旧メディア王国からバビロンに来ていたマギを通じてだったのではないでしょうか。

エジプト要素

それ以前、ユダヤ人はエジプトのアクエンアテン信仰(世界初の一神教)に影響を受けています。エジプトの神話、特にエジプト特有の死生観は知っていたと思いますが、そちらは大々的に受け入れた形跡がありません。

だからといって、ユダヤ教ゾロアスター教の死生観をパクリまくったと言いたいのではありません。「根幹で影響を受けた」という点が大事です。

  

ゾロアスター教の二元論

ザラスシュトラの教えがユダヤ教に取り込まれる過程で抜け落ちてしまったものがあります。

善悪対立に込められた霊的人間観です。

どういうことかと言うと、ザラスシュトラ善悪二元論は、神次元と霊次元の二段構えになっているのです。

 

神次元の二元対立

ひとつは神の次元の対立です。

ザラスシュトラの教えによれば、善(アフラ)と悪(ダエーワ)は独立した存在で、それぞれの世界を創造しました。そして相容れない性質を持つためつねに戦い続けます。戦いは3,000年ずつ4期12,000年にわたって続き、最終敵に善神側が勝利します。

  

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アフラとダエーワ

アフラとダエーワってなんだ?

ごもっとも。簡単に説明します。

インド人はイラン人は太古の時代は同じ民族だった(インド・イラン系アーリア人)ので別々に行動するようになってからも似たことばを使っていました。

ザラスシュトラの使っていたアヴェスター語は、インドのヴェーダ文献が書かれたサンスクリット語の近親言語なのです。

残念なことに、ペルシャイスラム王朝に征服されたときゾロアスター教聖典はほとんどが失われ、後に復元されたのは1/4ほどなのでゾロアスター教の全体像は確かめようがないのですが、ヴェーダ文献のおかげでいろいろ類推や推測は可能です。

ザラスシュトラが使ったアフラやダエーワに対応することばはインドにも残っていて、仏教に親しんでいる日本人にはそちらの方がわかりやすいと思います。

  • アフラ(Ahura)はインドのアスラ(Asura、阿修羅)に相当
  • ダエーワ(Daeva)はインドのデーヴァ(Deva、〇〇天の天)に相当

 

ところが、時代が経つと意味が逆転してしまいます。イランのアフラは善神ですが、インドのアスラは最初はそうでないものの、時代が下るにつれて悪神に降格されていきます。

反対にインドではデーヴァが尊重されるようになりますが、イランのダエーワは悪魔として扱われるようになります。

 

インドとイランの分裂が原因とされてきたが・・・?

従来、この逆転の原因について学者たちはインドとイランの仲違いでお互いを悪者に仕立てたと考えてきました。しかしそれを裏付ける物的根拠は見つかっていません。

ヴェーダ文献や仏教の経典上でデーヴァとアスラの意味の変化を辿っていくと、古い時代はどちらのことばも人間と神の両方を意味していたことがわかると言います。

しかし時代を経ると、インド・アーリア人たちは原住民や他のアーリア人と争い合うようになり、デーヴァを自分たちの守り神と見る意識を持ちました。最終的に征服者になった頃にはアスラはカーストの低い層に対応する悪神だけを意味するようになりました。

このような意味の変化はイランとは無関係に思われます。

 

気候変動の影響

そもそもアーリア人がインドとイランに分かれた最大の原因は、紀元前1500年前後に起きた急激な寒冷化と乾燥化で従来の居住地域を追われた結果ではないかと思います。移動の過程で仲間割れが生じたのかもしれませんが。

どちらにしても、イラン・アーリア人イラン高原の砂漠で生きていくことを選択します。アフラは、おそらく砂漠の民にとって大事な光や火や水を意味していたので悪い意味にはなるはずがなかったのでしょう。それに対してデーヴァは雷など厄介な存在を表すインドラの仲間だったので忌み嫌われたと思われます。

このイラン側での神認識の変化は、森に侵入したインド・アーリア人とは地理的にも環境的にも遠く離れた場所で起きていますから、意味の逆転は偶然そうなったと考えていいでしょう。

 

 

霊魂レベルの二元対立

ザラスシュトラの説いた善と悪はもうひとつあって、こちらをユダヤ教はカットしてしまいました。アシャ(Asha)とドルジ(Druj)という霊的次元の対立です。

 

  • アヴェスター語(古代ペルシャ)のアシャはヴェーダ語(古代インド)のリタ(rta)に相当し、宇宙の理法(天則)を意味します。ザラスシュトラは、アシャのエッセンスを「正義」として取り出し、アヴェスター教義の中核に据えました。
  • これに対しドルジは本来「(生を)害する」という意味なので「正義」に刃向かう「虚偽」と規定しました。

 

抽象的な概念でわかりにくいのですが、こう解釈できます。

神の次元の善神と悪神の対立は人間のあずかり知らぬ領域の話です。でも人間と無関係では言えません。

なぜなら、人間の霊の中に善神と悪神が埋め込まれていて、折に触れて競い合うからです(このとき善神に当たるのが正義のアシャ、悪神に当たるのが虚偽のドルジ)。

人間は神々の戦いが地上に投影されたかのように、アシャとドルジのはざまで揺れ動きます。

そういう人間観をザラスシュトラは持っていたのです。

 

三善と自由意志

ザラスシュトラは人間の基本的道徳律として三善、すなわち善思(善き思想=フマタ)、善語(善き言葉=フークタ)、善行(善き行い=フワルシュタ)を実践するよう説きました。

ゾロアスター教の現代性ともいえる部分ですが、三善を選ぶも選ばないもその人の自由に任せています。一人一人の自由意志を尊重し、ああせい、こうせいとは指図しませんでした。いま風に言えば、レコメンドであってコマンドではないのです。

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それで終わりではありません。善神と悪神の戦いは最終的に善神の勝利に終わることが確定しているとザラスシュトラは断言します。人間は死に際して、各自の行いの審判を受けることになります。

義者になり天国に召されるのも、不義者として地獄に堕とされるのも、原因は各自の自由意志に発していますので、神のあずかり知るところではありません。人間の自己責任なのです。これが「天の理法」の意味です。

 ユダヤ人がこのようなザラスシュトラの発想力に驚嘆したであろうことは想像に難くありません。なんせユダヤ人はせっかくカナーンの土地(約束の地)の領有を許されても、士師の時代になってもチョンボばかりして神の怒りを買うような宗教劣等生でした。そこへこの世は神とは別に悪魔がいるというのです!しかも神とは違う独立した世界を創造し営んでいるのだ、と。

「自分たちのせいじゃない。悪魔のせいなんだ!」というのは大変魅力的な考えだったでしょう。

 さらには、死んだらそれまでよと思っていたのに、ザラスシュトラ最後の審判を教えています。善き人間と認められれば天国に行ける!

これは朗報であると同時に、身の引き締まる思いがしたでしょう。もうそれまでのように劣等生を続けることはできず、神に甘えられません。最終不可逆の判定が下るのですから。

 

ユダヤ教2.0

おそらくですが、バビロン捕囚時代からイスラエル帰還後の時代に、ユダヤ教ゾロアスター教を取り込みながら大改編を受けました。バイロンでの暮らしはゾロアスター教のみならず、メソポタミアコスモポリタンな神々(マルドゥク?イシュタール?)との出会いでもあったので、そちらの影響もあったでしょうが、根幹部分への影響はゾロアスター教で間違いないと考えます。

 

律法と唯物主義

ユダヤ教には独自の律法(トーラー)が生まれました。そこでの法はヤハウェ自身が与え、人間はひたすら神の命令に服するものです。

ゾロアスター教とは違い、人間に自由意思はなく、神とは別の次元に倫理規範(霊性)を設定し人間の自主性に任せるという発想が見られません。ユダヤ教の聖職者や律法学者は、ゾロアスター教の神の抗争という外形部分のみを採用し、霊的次元の抗争という倫理レベルのモチーフは捨てたわけです。この辺りにヘブライ人が唯物主義者と言われるゆえんがあるのではないでしょうか?

その結果、

  • 善の最高神アフラマズダーとその家来である彼の7属性から、神と天使のコンビが生みだされ、
  • 悪の最高神アンラマンユ(アーリマン)とその眷属の関係から、神と悪魔のコンビが生みだされたのです。

 

ゾロアスター教の現代性

現在の眼から見ると、人間の自由意思と霊性を重視する点でゾロアスター教の方がユダヤ教よりずっと現代人に訴える合理的な教義を持っていると思います。皮肉にも、セムの末弟イスラム教徒に滅ぼされてしまったわけですが・・・

 

なお、この話はまだ先があります。民族の話、日本人との関わりへ発展していくのですが長くなるので今回はここでやめます。続きはこちら ↓ からどうぞ。